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なぜ、金正日が正男でなく正恩を後継者に選んだのか。
金正男の本(『父・金正日と私 金正男独占告白』、五味洋治著)を私も読みました。彼があのような考えであるということについては、既に情報がありましたので、あまり驚きませんでした。家族会・救う会の集会に二度東京に来ていただいた張哲賢(チャン・チョルヒョン)さんという元統一戦線部の幹部が、1996年8月に平壌で金正男に会っています。正男が海外に出る前です。
その時は長男として、後継者になるかもしれないと思われていました。会った場面が大変面白い。私が張哲賢さんから直接聞いた聞いた話しは以下の通りです(張さんの証言を西岡ブログに翻訳してあります)。
北朝鮮の党や軍の最高幹部たちの娘や息子たちがあるグループを作っています。中国でも太子党(幹部の子供ら)がありますが、北にもそういう人たちが自分たちのことを「第3経済委員会」と裏で名乗っている28人がいて、毎週土曜日高級ホテルや食堂などでミーティングをしていた。(張成沢の兄張成禹 (首都防御司令部司令官)の娘の張ミヨン(미영)、呉克烈の息子呉セウク(세욱)、北朝鮮ゴルフ協会会長の娘チョン・スンヨン(정순영)、李乙雪 (護衛司令官)国家元老の長女の婿朴チョル(철)、党組織部軍事担当第1副部長李容哲の長女李ヨンナン(영란)、北朝鮮麻薬販売総責任者の党対外連絡部平壌柳京会社社長孫コナ(건하)の妻、李ヘスン(해순)、孫コナの兄のマカオ駐在、孫ギョンチョル(경철)の息子孫チョル(철)、北朝鮮に6億ドルを送金した朝鮮総連傘下朝鮮信用組合会長の孫娘李スナム(수남). 60年代から党対外連絡部海外工作員として派遣されてフランスで病院長として事業をしていた父から巨額を受け継いで大金持ちになった金日成社会主義青年同盟所属の銀星(은별)貿易管理局局長李ビョンソ(병서)、李鍾玉前国家副主席の息子李チャン(찬)など)
そこで何をしているかというと、闇市のコメの値段や食糧の値段を操作して金儲けしているのです。闇市を投機の対象にして、現金を持っているので中国から食糧を買ったり、あるいは横流ししたものを持っていて、出し惜しみして値段を高くして売っています。闇市をコントロールできるような人間たちが集まって、そういうインナー・サークルを作っている。
張哲賢さんはそんなにお金持ちじゃないんですが、メンバーに親しい友達がいたので名誉会員的に時々出ていたそうです。ある日李ビョンソが太った男を同行して入ってきた。その男は初対面にもかかわらず「これは第3経済でなく完全に第1経済だな」という大きい声で放言した。しかし、金正日の長男金正男だということが分かった時に、皆が腰を低くした。金正男は自信ありげに話した。
「お父さん(註・金正日)が国の状況がこのざまなので、私を見て国家経済をちょっと立て直してみろといいました。私は中国式改革開放以外に方法がないと考えます。私がここに来たものもあなた方がその主役になれるのではないかと思ってです。私はまず光明星総会社を作ろうと思います。それは資本主義式に言えば大企業グループです。あなた方が子会社として光明星総会社に入ってくれば可能だと思います。光明星総会社(註・北朝鮮で光明星とは後継者を意味する)から始めて、あなた方の会社が別のグループとして広がればそれが経済改革ではありませんか。」と言った
第3経済委員会というのは説明が必要です。北朝鮮には第2経済委員会が実在します。これは軍需経済を担当する機関で、1972年に作られた。北朝鮮は社会主義ですからすべて国家予算でやります。民間というのはないわけです。
政府が作る計画経済から、金正日が軍需部門を引き離して軍需部門を別にしました。それを司る部署が第2経済委員会です。そこで核開発やミサイル開発も担当し、その資金は別系統です。だから人民が飢えていても第2経済委員会には金があるんです。
そして金正男は、これは第3経済委員会だと言ったのです。これは比喩です。実は北朝鮮の経済は、計画経済があり、その外に第2経済委員会があり、その外に金正日の個人資金があり「労働党39号室」という所などが管理しています。大きく言えば、第2経済委員会と「39号室」が金正日の個人資金ですが、その外に闇市経済があります。
その闇市経済を牛耳っている幹部の子女たちに、「これは第3経済でなく完全に第1経済だな」と言って、俺と手を組んで改革開放をやろうと言ったのです。
実際に、金正男はそれから一週間もならないうちに平壌市大同江区域清流1棟の大成デパートの横に光明星総会社という看板をかけてビルを建て始めた。完工したそのビルは現在は三千里総会社になっているが、その時は李ビョンソをはじめとする他のメンバーは地上に姿を現す鉄筋を眺めることだけでも幸せで一杯な状況だったと言います。
ところがそれから4か月後に李ビョンソが国家保衛部に逮捕されたのです。罪名は韓国安企部からワイロをうけとったということでしたが、実際は金正男の改革開放計画の中心にいた人物だったからでした。
金正日は金正男に「お前は経済よりまず政治から知らなければならない」として国家保衛部副部長に任命した。しかし、その地位でかえって金正男は暴圧的な方法だけでは絶対に体制を長く続けて行くことができないということを痛感して、海外放浪の道を選択したのです。崔龍海が更迭されたのも李ビョンソの「反逆罪」がその発端だったと張氏は証言してくれた。李ビョンソの取り調べ過程で李が崔龍海に米貨幣350万ドルを上納したことと青年同盟の女たちとのセックスパーティーが発覚し、この事実を知った金正日は実の弟のようにかわいがっていた崔を解任するほかなかったということです。
このことは五味さんの本にも書いてありますが、私は張哲賢さんから数年前に直接聞いていました。EndFragment つづく
(2月15日、救う会東京連続集会で行った西岡講演の一部です。)